ハンガリーワインの豆知識
【ブドウ品種】ケークフランコシュ
【原産地】
・中央ヨーロッパ原産
・19世紀初めまで知られていなかった、比較的新しい品種
Gouais blanc(グー・ブラン)、 Gamay Noir(ガメイ・ノワール)に関連していることがわかっています。
【特徴】
・ハンガリーが世界で最も多く生産
・カダルカに代わり、ハンガリーにおいてここ20年ほどで急速に人気となった黒ブドウ品種
・ハンガリーでは約8,000ヘクタールの畑でケークフランコシュが栽培されており、ハンガリーで最も栽培されている黒ブドウ
ミネラル分の多い岩石、レス(黄土)、砂地でも育つ品種です。
果実は赤みのある紫色で、オレンジがかった熟成感が表れにくい強い色素を持っています。酸味がしっかりとした品種で、気品のある味わいが特徴。
晩熟な品種であり、骨格のしっかりした高品質なワインを生むポテンシャルがある一方で、若いうちにはやや楽しみにくいワインになることもあります。ポテンシャルは、数年寝かせた後で発揮されるといわれており、一般的には熟成型の赤ワインを作ることを目的として用いられることが多いです。
発芽が早く晩熟の種は、完全に熟れるためにセクサールドやヴィラーニ(ハンガリー南西)のような温暖な環境が望ましいです。セクサールドでは、伝統的に大樽を使い、ケークフランコシュから新鮮な酸味や上品さをかもしだすワインを造っています。特に、セクサールド・ビィカベールのブレンドではケークフランコシュが重要な品種となっています。
ショプロン(ハンガリー北西端)やエゲル(ハンガリー北西)のような冷涼な地方でも育ちます。エゲルではケークフランコシュを使って、なめらかな(silky)ワインを造っています。
冷涼な地域のケークフランコシュはフルーティーでラズベリーやすみれの香りが特徴的です。
ケークフランコシュだけではなく複数の品種をブレンドする場合は、ケークフランコシュが骨格となります。ヴィラーニ地方ではカベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニョンとブレンドされます。
【他の呼び方】
ブラウフレンキッシュ(オーストリア)、レンベルガー(日本、アメリカ、ドイツ)
【トリビア】
~青いフランの紙幣=ケークフランコシュ~
1809年4月10日オーストリア帝国がイギリスと同盟を結成し、ナポレオン1世のフランス帝国による覇権に挑んだ戦役の際、ハンガリー北西端に位置しオーストリアに接するショプロンの町は想定よりはるかに早くフランス軍によって占領されてしまいました。
占領は非常に苦痛なものでしたが、それがきっかけでショプロンの最も素晴らしいワインに名前をつけることができたのです。
フランス兵士はフランでワインを購入していました。青い色のフランが最も価値があるということに、ショプロンの人々は気づき、ワインを販売する際、「青いフランの紙幣=ケークフランコシュ」を要求するようになりました。それ以降、そのワインのブドウはケークフランコシュと呼ばれるようになった、という逸話が残っています。
ハンガリーでは地方の通貨が存在しており、その数は300あまりともいわれています。
ハンガリー国立銀行では、こういった地方通貨の発行に反対はしないが流通を奨励もしていません。
国立銀行ではこの地方通貨のことを「バウチャー」と呼んでいます。
「ケークフランコシュ」は2010年に発行されたハンガリーの最初の地方通貨で、最初は見込んでいたほどは流通しませんでしたが、じわじわと人気が出はじめ、この地方通貨を受け付けるレストラン、ホテル、店舗が増えていきました。
ケークフランコシュを給料の他に上乗せで受け取り、地元でディスカウントを受けることができるため、地域内での買い物に使うようになりました。
ショプロンの548のポイントでケークフランコシュが使用され、クロアチアやスロベニアでも使うことができたようです。今でもショプロンでは、地元の消費促進のため、こちらの通貨が使われているそうです。
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