ハンガリーワインの格付け②

ハンガリーワインの豆知識

「ハンガリーワインの格付け」の後編です。

EUのワイン法に則った格付けは3種類（PDO、PGI、WINE）ですが、ハンガリーワインでは独自の規定を設けて4種類あり、その頂点がDHCという格付けになります。

DHCは、醸造方法において最も厳しい品質管理を課せられており、地域固有の製造スタイルと使われるブドウの品種により、特徴的なフレーバーを保っています。

DHCはよくPDO（EUにおける原産地呼称ワイン）と間違われますが、DHC格付けは任意のため、必ずしも品質の高いワインが全てDHCワインとは限らず、PDOと等しいとも言えません。

DHCであることは品質が高いか低いかを直接的に表しているわけではなく、その地域の個性が分かりやすく表現されていることを意味します。

DHC格付けを採用している地域は現時点で７地域です。今後増える可能性もあります。

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　①ヴィラーニDHC
　②エゲルDHC
　③トカイDHC
　④デブリューイハルシュレヴェルーDHC
　⑤ショムローDHC
　⑥カーリメデンツェDHC
　⑦イジャーキ　アラニシャールフェヘールDHC

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①ヴィラーニDHC
ヴィラーニはハンガリーワインの産地としては最も南に位置し、高品質な赤ワインの産地として有名です。

格付けのマークとなっているハンガリークロッカスは、ヴィラーニにあるサールショムリョ―丘陵の南側に自生しており、春の訪れを告げる花として親しまれています。

黄土とカルシウムに覆われた石灰岩の土壌と温暖な地中海性気候が生み出すヴィラーニワインは熟成感があり、とてもリッチでフルーティな味わいです。

ヴィラーニDHCは3つに分類されています。

・ヴィラーニ・クラッシクス
ヴィラーニの特徴を持つ様々なブドウ品種を使ったワイン
・ヴィラーニ・プレミアム
クラッシクスよりも厳しい基準を満たす。また、個々のブドウ畑の特徴を持ち、ブドウ栽培、醸造においても特別な価値を認められるもの
・スーパー・プレミアム
カベルネ・フラン100％で醸造されるワインのみ。収穫制限、官能評価、”ヴィラーニ・フラン”とラベルに記載。最低1年オーク樽で熟成させ、更に1年瓶内熟成させる

スーパー・プレミアムのラベル例
”ヴィラーニ・フラン”

②エゲルDHC
エゲルはハンガリーの北東に位置し、ハンガリー有数のワイン産地です。日本でもエグリ・ビィカベール（“牡牛の血”という意味）の産地として有名です。
エゲルDHCも栽培や醸造方法により、以下に分類されています。

・エゲル・クラッシックス
　収穫制限　13.6t/㌶

・エゲル・スペリオール
　収穫制限　8.1t/㌶

・エゲル・グランドスペリオール
　収穫制限　6t/㌶

「エグリ・ビィカベール」や「エグリ・チッラグ（エゲルの星）」を名乗れるワインはブレンドできるブドウの品種も細かく決められています。

・ビィカベール（赤ワイン）

クラッシックス：
ケークフランコシュ、ケークオポルトー（ポルトギーザー）、カダルカ、ブラウブルガー、ツヴァイゲルト、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロ、ピノ・ノワール、メノワール、トゥラーン、ビーボルカダルカ

スペリオール：
ケークフランコシュ、ケークオポルトー（ポルトギーザー）、カダルカ、ブラウブルガー、ツヴァイゲルト、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロ、ピノ・ノワール、メノワール、トゥラーン、シラー

グランドスペリオール：
ケークフランコシュ、ケークオポルトー（ポルトギーザー）、カダルカ、ブラウブルガー、ツヴァイゲルト、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロ、ピノ・ノワール、メノワール、トゥラーン、シラー

・チッラグ（白ワイン）
クラッシクス・スペリオール・グランドスペリオール：
ブゥヴィエ、シャルドネ、シャスラー、チェルセギフーセレシュ、フルミント、ハールシュレヴェリュー、イルシャイオリヴェール、ユファルク、カバル、ケルナー、キラーイレアーニカほか

③トカイDHC

ハンガリーのワイン地域の中で最北部に位置し、貴腐ワイン「トカイ・アスー」の産地として知られています。その他、マーシュラーシュ、フォルディーターシュ、サモロドニ、エッセンシアの産地でもあります。

主にフルミントと呼ばれる白ブドウ品種を使用し、ハールシュレヴェリュー、シャールガムシュコターイなどとブレンドして使うこともあります。

ブドウ畑を土壌、水、霜などの要件で採点し、4グレードに格付けし、公表しています。

④デブリューイハルシュレヴェルーDHC
ハンガリー北部の丘陵部に位置し、暑い夏もマートラ山からは夜間に冷たい風が吹きます。この気温差のおかげで爽やかな酸やフルーティさが生まれます。

白ワイン用ブドウ品種のハールシュレヴェリューのレイトハーヴェスト（遅摘みブドウを使った甘口ワイン）がブドウの仕立て方法、最大収穫量等の要件をもとにクラッシクス、スペリオールに分類されます。

⑤ショムローDHC
12世紀からの長い歴史をもつフルミント、ハールシュレヴェリューなどの白ぶどうの産地です。火山性の地質と温暖な気候がブドウ栽培に好影響。ブドウの仕立て方法や醸造方法がDHCの要件となっています。

⑥カーリメデンツェDHC
バラトン湖の北側に位置し、大陸性、海洋性、地中海性気候と複雑な火山性土壌の影響を受け、ブドウの生育がよく、リースリングや、スーケバラートなどの白ワインの産地として有名です。

⑦イジャーキ・アラニ・シャールフェヘールDHC
ドナウ川の東側、気候は大平原特有で、夏は暑く冬は寒く乾燥しています。アラニ・シャールフェヘールは白ブドウの名前でハンガリーのみで栽培されています。

ブドウ畑は格付けされ、1級、2級のみで栽培が認められています。また、仕立て方法（コルドンのみ）やブドウ糖度、収穫時期、手摘みに限るなどの細かい制約があります。

ハンガリーワインというとトカイやエゲル地方が有名ですが、それぞれの地域で質の良い特徴的なワインが造られています。

格付けでワインの良し悪しをはかるものではありませんが、厳しい規定のもと丁寧に手間暇かけて造られた証にはなっています。
これらのワインを口にする機会がありましたら、ぜひ、遠い中欧の地と妥協なき造り手の情熱に思いを馳せ、ゆっくりと楽しんでいただけたらと思います。

ブドウ畑

2020年12月28日

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